カクテルパーティー効果って知ってますか?
カクテルパーティー効果とは、カクテルパーティーのようにたくさんの人がそれぞれ雑談をしているなかでも、自分に興味のある会話や、自分に必要な音だけを取捨選択し自然と聞き取る事が出来る脳の働きのことです。
また、反対に必要ない音を「雑音」として捉え、意識しないこともカクテルパーティー効果になります。
カクテルパーティー効果が働かない。頭がパンクしてしまう
発達障害の特性を持っている人の中には、聴覚過敏を持っている人もいます。聴覚過敏があると「カクテルパーティー効果」がうまく働かなかったり、効果が弱かったりして困っている人もいます。 カクテルパーティー効果がうまく働いている場合、自分に必要な音だけを聞き取り、自分に必要のない音は「雑音」として捉える事が出来ます。
しかし、カクテルパーティー効果がうまく働かないと自分に必要のない音も全部拾ってしまいます。そのため、たくさんの情報が一度に頭の中に流れ込んでくることがあり「頭がパンク」状態になってしまうこともあります。
感覚過敏と感覚鈍麻
発達障害者がカクテルパーティー効果が働かなくて困る原因に「感覚過敏」と「感覚鈍麻」があります。
「感覚過敏」とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感が敏感である状態のことを指します。
特に聴覚過敏を持っていると音に敏感であるため、色々な音を拾ってしまい自分に必要な音の選別が出来なくなります。
「感覚鈍麻」は五感が鈍感である状態のことです。音に対して鈍感なため人の話をうまく聞き取る事が出来ません。
感覚過敏について細かく見ていきましょう
感覚過敏をより細かく見ていくと、いわゆる普通の人なら負担に感じないような五感の刺激を、感覚過敏を持つ発達障害者は「やり過ごす」ことができません。ごく普通の刺激を、耐えがたい苦痛として感じることもあります。
では、感覚鈍麻はと言うと、たとえば、聴覚と視覚は敏感なのに、痛みや疲れには鈍感だったりして、自分の身体の状態に気づけない人がいます。
ある部分が過敏な一方ほかの感覚が鈍感で、頭の中をいつも特定の刺激に支配されていて不安感があるため、落ち着く刺激を自分に繰り返し与えることで対処しようとする人もいます。これがいわゆる常同行動(周囲からすると無目的に見える同じ行動を繰り返すこと)につながったりします
感覚過敏と感覚鈍麻は表裏一体
発達障害者が体感している感覚過敏の世界は、たとえば「目の前で強いフラッシュが焚かれて、そのまぶしさ以外何も見えなく/感じなくなる」感じだといえるかもしれません。 あるひとつの刺激が強すぎる形で脳みそに入ってくる。その刺激が脳みそを支配してしまって、ほかのものが見えなく/感じなくなります。つい、しばらく目をおさえてうずくまりたいような気分になる、あるいはつい叫んでしまうこともあります。 感覚過敏と感覚鈍麻は「感覚処理のアンバランス」という一言で言い表せるものかもしれません。発達障害者の「困った言動」の根本には、こうした「感覚処理のアンバランス」があるのかもしれません。
自分でもなかなか気づきにくい特性
この「カクテルパーティー効果がうまく働かない」という特性は、自分でもなかなか気づかないこともあります。その理由は、音自体は聞こえているがそれの取捨選択が難しいという状態なため、人の話が聞き取りづらく「もしかして聴力に問題があるのでは?」と感じても、聴力検査は音が聞こえるかどうかという検査であるため「問題なし」という結果になってしまうからです。
「わがまま」「我慢がきかない」といわれ、理解してもらいにくい
自分でも気付きにくい特性なので、家族や友人、職場の同僚にもなかなか気付いてもらえず、つらい思いをされてる方が多いと思います。
・誰もいないところや部屋の隅で仕事をしたがる
・頻繁にフラッとオフィスからいなくなる
・周囲から見たら理由が見当たらないのに突然怒り出したり怒鳴ったりする
・人前で耳をふさいだり鼻をつまんだりする
・疲れやすく、すぐに体調を崩す
・いつもどこかしらの体調不良を訴えている
・仕事中、すぐにぐったり疲れてしまう。実際に顔色まで悪くなったりする。自己管理に務めるよう言うと反論する
・会話中などに目線を自然に使えない。ぜんぜん相手の目を見なかったり、逆に見つめすぎたり、虚空を見つめていたりする。指摘してもどうもうまくいかない
・室内なのに帽子をかぶりたがる
・職場が雑然としていると神経質になって片付けはじめる。あるいは片付けが極端に苦手
【各種過敏がいろいろあるのかも?】 と考えてみることが必要かもしれませんね。
次に感覚過敏への一般的な対応の仕方を見ていきたいと思います。
聴覚過敏への工夫:イヤーマフやデジタルイヤホン
雑音(エアコンや換気扇の音)なども聞こえてしまう人におすすめしたいのはイヤーマフやデジタルイヤホンです。雑音をカットし、必要な音に焦点をあてて聞きやすくしてくれます。人にもよりますが音の刺激が一定である場合は集中ができるため、集中して作業するときは他の音をすべて遮断し、音楽を聴くことで対処できることもあります。不快な音は好きな音で消すこと集中することができたりします。また、周りに音や刺激が気になり集中できない人は、分厚めの衝立で刺激を遮断することをおすすめします。
視覚過敏への工夫:明るさを暗めに
光がまぶしい人は、パソコンやスマートホンの明かりを暗く設定します。サングラスも良いです。紙が白くてまぶしい人は、クリアファイルのカラー版がおすすめです。このクリアファイルをかぶせるだけで字が読みやすくなります。
また、「グリーンノート」という視覚過敏者向けの緑色のノートもあります。
触覚過敏への工夫:心地よい素材の服を何着も持つ
一度心地よい素材を見つけたら、その素材の服を買う、もしくは、同じ服を繰り返し買います。同じ服を10着も持っていて、それを毎日着ている方もいます。どうしてもスーツなど苦手な触感の服を着なければならないときは、そのときだけ着替えます。一度心地よい素材を見つけたら、その素材の服を買う、もしくは、同じ服を繰り返し買う。もしくは、心地の良い素材のもの(ハンカチやストール)を組み合わせることで、心地悪さを濁すのもひとつの手です。
人の気持ちや周りの反応に過敏な特性をお持ちの方もいます
五感の過敏さについて紹介しましたが、そのほかにも、人の気持ちや周りの反応に過敏な特性をもつ人もいます。いわゆる「感受性」が強いと言われている人たちです。
例えば、自分は怒られていないのに、他の人が怒られている場面を見聞きすると、自分が怒られたのと同じくらいダメージを食らってしまいます。また、すこしでもネガティブなことを言われると、その言葉がずっと頭を渦巻いたりしている場合もあります。
人の気持ちや空気感に過敏になるというのは、発達障害の方の感覚過敏とは、違うといわれています。
しかし、過敏のためにつらい思いをされることが多いという点で共通点も多いのでご紹介します。
早い段階での自己認識と過敏さを忘れる楽しい経験
他の人がどのように感じているかを知ることが極めて困難であるため、自分と他者の感じ方を比較するのは難しいです。過敏な方の中には、「周りも自分と同じぐらい不快なのに、我慢している」と認識してしまっている方もいます。
早い段階で「他の人よりも自分が感じやすい」ことを自己認識し、そのための対処方法を知っておくことが重要になります。また、楽しんでいるときは、不快な感覚を忘れている人が多いです。そのため、過敏さに勝るぐらいの楽しい経験や好きなものに出会えます。 感じ方は学習してきた、というより、生まれ持ったものであるため、「過敏さを克服する」のは難しいです。それよりも、うまく付き合っていけるように工夫していくこと、そして周りの人も上記のような困難さを抱えていそうな人がいたときには、寛容な環境を一緒につくってほしいと思います。
細部までよく気が付き、繊細な感覚を持っている
「神経質すぎる」と過敏さにネガティブなレッテルを張るのではなく、むしろ「細部で気が付く」「音を聞き分けられる」「繊細な味覚」など過敏さとうまく付き合いながら、強みとして活かしていけるとより良いと思います。